妊娠中は、赤ちゃんが成長すると共に体重も増加するものです。出産に備えて、ある程度の脂肪を蓄えるという理由でも、体重は増えていきます。そこで今回は、妊娠中の体重増加の目安や、体重管理で気をつけたいことなどを紹介していきます。
妊娠中の体重増加の目安
妊娠中は体重の変化が激しく、体重だけではなく体型も大きく変わってきます。特に安定期に入ることで、食欲が戻りその反動で食べてしまう妊婦も多くいます。そのため体重の管理に苦戦する方々がたくさんいるのではないでしょうか。
体重増加の目安は、妊娠前のBMIという数値で、妊娠中の理想の体重の増え方を知ることができます。BMIという数値は、「体重kg ÷ (身長m)2」で簡単に求めることができます。肥満度を表す数値なので、妊娠をした場合の他にも使用されることがあります。
また妊娠中の体重増加の目安は、2021年3月に新しく改善されました。「妊婦の体重管理は厳しい」というイメージから、「痩せすぎている妊婦は体重を増やすべきだ」という考え変わっていったようです。
妊娠前のBMIが18.5未満の場合
妊娠前のBMIの数値が18.5未満の時、「12kg〜15kg」の体重増加が理想とされています。以前までの体重増加の目安は、10kg〜12kgや9kg〜12kgと言われてきました。しかし痩せている妊婦が増えていることもあり、もっと体重を増やすべきだと言われています。
BMIの数値が18.5未満であることは、「低体重(痩せ)」に該当します。低体重の妊婦は、もともと母体が栄養不足と捉えられ、出産に向けて体重を増やさなければいけません。低出生体重児の数が増えているのは、このような低体重の妊婦が増えているからなのです。
妊娠前のBMIが18.5以上25未満の場合
妊娠前のBMIの数値が18.5以上25未満の時、「10kg〜13kg」の体重増加が理想とされています。このBMIの数値である妊婦が多く、「普通体重」に該当します。10kg以上体重を増やしていいからといって、急な体重増加には気をつけましょう。
かかりつけ医によっては、体重が10kg増えた時点で注意する場合もあります。病院によっては方針も異なり、この体重増加の数値は目安として捉えられます。特に妊娠後期になると体重が増えやすくなるので、体重は均等に増やしていくことを意識するといいでしょう。
妊娠前のBMIが25以上30未満の場合
妊娠前のBMIの数値が25以上30未満の時、「7kg〜10kg」の体重増加が理想とされています。このBMIの数値は、「肥満(1度)」に該当します。それでも10kgまでの体重増加が求められており、赤ちゃんの体重や羊水、血液の量、胎盤の重さなどが含まれています。
肥満(1度)に該当するからといって、体重を増やさないようにする方が中にはいます。しかし妊婦の場合は、母体貯蔵脂肪が必要なので、「増やさない」という考えではなく、「ゆっくり増やしていく」という考えをするといいでしょう。
妊娠前のBMIが30以上の場合
妊娠前のBMIの数値が30以上の時、「上限5kgまで」の体重増加が理想とされています。BMIの数値によっては、1kgも増やさない体重管理が必要である場合もあります。かかりつけ医との相談が必須です。
BMIの数値が30以上であることは、「肥満(2度)」に該当します。肥満(2度)である場合は、体重管理のために生活から見直すように指摘されることが多いです。妊娠中または出産時にトラブルが起きないよう、課題はたくさんあります。
妊娠中に体重が増えすぎるとどうなるのか?
妊娠中の体重管理は、妊娠前の体格によって方法や方針が異なってきます。妊娠前は体格も問題がないからとはいえ、いざ妊娠すると思うように体重を管理することができないこともあります。
妊娠初期・中期・後期と時期が分けられますが、特に妊娠中期から後期にかけて体重増加が著しいです。つい食べすぎてしまったり、運動不足になってしまったりと、体重が増えてしまう原因はさまざまです。
そこで実際に、妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、どのようなリスクがあるのかを紹介していきます。どのようなリスクがあるのかを知って、出産に備えて体重管理に意識を向けるといいでしょう。
難産になる可能性が高くなる
妊娠中の体重が増えすぎてしまうと、まず「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」という病気にかかってしまう可能性があります。妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧になってしまうことで発症します。妊娠糖尿病は、妊娠中に血糖値のコントロールが難しくなってしまう症状があります。
妊娠中に肥満になってしまったり、これらの病気になってしまうと、難産になる可能性が高まります。脂肪で産道が狭くなってしまったり、胎児が巨大児に成長し産道を抜けることが難しくもなってしまいます。
特に妊娠高血圧症候群は、胎盤の機能が劣ってしまうことがあります。そうなってしまうと、赤ちゃんに直接栄養が届かずに、母子ともに命の危機へと繋がってしまうこともあるので要注意です。
赤ちゃんが合併症を起こしてしまう可能性がある
体重増加が原因で妊娠糖尿病になって、無事に生まれてきたとしても、赤ちゃんが合併症を患ってしまうこともあります。母体の血糖値が上がってしまうことで、赤ちゃんも高血糖になってしまいがちです。
この時に考えられる合併症には、「新生児低血糖症」や「新生児黄疸」、「胎児発育遅延」などがあります。生まれてきても、「胎児仮死」の状態にあることも考えられます。少しでもリスクを無くすためにも、妊娠中の過ごし方が鍵となってきます。
妊婦が体重管理を行う上で大切なこと
妊娠中は、思い通りに体重を管理できないこともあります。特に初産婦は、妊娠中の体の変化や食欲の変化などを経験したことがありません。そのため上手に体重管理ができなくて当たり前といっても過言ではありません。
また妊娠中は思い切り体を動かすこともできず、流産のリスクもあります。融通の効かない体を持ちながら、日々の生活をやりこなすだけでも精一杯です。経産婦であれば、上の子の面倒を見ながら、自分の体のことも気にしなくてはいけません。
そこで妊婦が上手に体重管理をするために、どのようなことを徹底するといいのかを紹介していきます。妊娠中はホルモンバランスが不安定です。体重管理と共に、心のケアも心がけていきましょう。
毎日体重を計測する
妊娠中の体重を上手に管理するためには、まず毎朝体重計に乗って体重を計測してみましょう。1日に何度も図る必要はありませんが、毎日自分の体重を知ることが大切です。「今日は増えすぎたな」という日は、食事などに気をつけるといいでしょう。
妊娠中の体重の変化では、急な体重増加を避けることがポイントです。急に体重が増えることで、高血圧や高血糖などに繋がってしまいます。
しかしあまり体重計の数値を気にしすぎてしまうと、それがストレスに感じてしまう場合もあります。外食したり、久しぶりにデザートを食べたりと、たまの息抜きも必要です。心のストレスは、赤ちゃんに影響を及ぼしてしまいます。
健康的な食事を心がける
妊娠中は、健康的な食事をすることが基本的です。体重を管理するだけではなく、赤ちゃんに必要な栄養も摂取することができます。体重が増えているからといって、食事を取らないということは禁物です。
妊娠中におすすめな健康的な食事には、和食がおすすめです。和食の定食をイメージするとわかりますが、肉や魚、野菜などをバランスよく食べることができます。栄養面だけではなく、カロリーの過剰摂取も抑えることができます。
出産に備えて適度な運動をする
妊娠中だからといって、全く運動をしないことは避けるべきです。1日の摂取カロリーに対して、消費カロリーも必要です。ランニングなどの激しい運動は危険ですが、散歩であれば気軽に始めることができます。
また適度な運動をこなすことで、出産に備えて体力を作っておくこともできます。出産時には、「富士山を登る以上の体力」を要すると言われています。妊娠をきっかけに、適度な運動を始めても遅くはありません。
ただし切迫流産や切迫早産である場合は、極力動かないことをすすめられます。体調がすぐれない日もあるので、体調がいい日には適度な運動を心がけるといいでしょう。
無理なダイエットはしない
妊娠中に体重が増えすぎたからといって、無理にダイエットすることは危険です。無理にダイエットしようとすると、母体が栄養不足になってしまいます。赤ちゃんへの影響は大きいとされています。
ダイエットをしなければいけないのであれば、過度なダイエットで減らすのではなく、体重を増やさないという考え方が大切です。1日に3食は食べるが、野菜を多めに食べることを意識したりするだけで効果的です。
妊婦の痩せすぎもリスクがある!
妊娠中の体重増加を気にする方が多いですが、気にしすぎで痩せすぎてしまう妊婦も中にはいます。体重が増えすぎてしまうことでさまざまなリスクがありますが、体重が減りすぎたり増えない場合でも、さまざまなリスクがあります。
またもともと痩せすぎている方が妊娠すると、出産に備えてしっかり体重を増やすことが重要視されています。妊娠が発覚したら、妊娠前のBMIの数値を参考にし、まずは理想の体重増加を知ることから始めましょう。
赤ちゃんへの栄養が足りない
痩せすぎている妊婦は、栄養不足である状態です。母体が栄養不足になってしまうと、赤ちゃんも栄養不足となってしまいます。そのため赤ちゃんが必要とする栄養が足りずに、小さく生まれてきてしまう可能性があります。
また栄養不足で小さく生まれてきた赤ちゃんは、将来的に生活習慣病にかかってしまうこともあります。吐きづわりなどで食事が困難な場合を除いて、食事ができるのであれば栄養のあるものを摂取することをおすすめします。
早産になる可能性が高くなる
体重増加が足りない場合には、出産が早まってしまい早産になってしまう可能性があります。早産とは、妊娠22週0日〜妊娠36週6日までの間の出産のことを言います。早産で生まれてきた子は、未熟児とも言われています。
早産で生まれてくると、低体温症や低血糖症を起こしてしまう可能性があります。子宮の外で生きていくための準備が、ままならない状態で生まれてくるということでもあります。
まとめ
妊娠中は体重増加に目を向けられがちですが、増えすぎても増えなさすぎても問題があります。母体の管理をするということは、赤ちゃんが健康に成長するためにも大切なことです。体重の数値ばかりを気にしすぎるあまり、ストレスに感じる場合は心のケアも必要です。楽しい妊婦生活を送るためにも、体重と心のケアに目を向けていきましょう。